健康コラム
便失禁(べんしっきん)について
便失禁とは
【便失禁】とは、「無意識のうちにもしくは意思に反して便が排せつされる」排便障害の症状です。
通常の生活を送っている方には縁のないものに思えるかもしれません。しかしその頻度は実は決して低くなく、20歳から65歳の方で約4%、65歳以上の方で約7.5%、約500万人の方が症状をお持ちであるとされており、意外にも身近な病態といえるものなのです。
便失禁の原因
便失禁の原因には
- 加齢による肛門括約筋の衰え
- 直腸がん、もしくは痔などの手術の影響
- 分娩、出産にともなう肛門括約筋の損傷
などがありますが、とくに原因なく起こることも少なくありません。
便失禁の分類
便失禁はその症状により3つに分類されます。
①切迫性(せっぱくせい)便失禁 | 便意を催してからトイレまで我慢できずに失禁してしまう |
②漏出性(ろうしゅつせい)便失禁 | 便意を感じないまま自然に便が漏れてしまう |
③混合性便失禁 | ①切迫性、②漏出性、両方の性質をもつ便失禁 |
便失禁の検査
直腸肛門機能検査
肛門内に直径5mm程度の細い管を挿入後、肛門内の圧を測定し、肛門括約筋の強さや直腸の感覚の有無を調べます。痛みや苦痛はありません。
肛門超音波検査
肛門括約筋の断裂の有無などを調べる目的に行う検査です。肛門より直径1.5cm程の超音波プローブを挿入し、肛門括約筋の状態などを超音波で検査します。痛みや苦痛はありません。
便失禁の治療
① 薬による治療
便の硬さや、腸の動きを調節する薬により排便状況の改善を図ります。
② バイオフィードバック療法
肛門括約筋の収縮をモニタリングし、可視化しながら、その上手な使い方、排便の仕方を訓練する治療法です。(写真1・2)
③ 仙骨神経刺激療法
平成26年から日本でも健康保険の適応になった比較的新しい治療法です。臀部(おしり)に小型の刺激装置を埋め込み、装置から伸びたリードを介して電気信号で排便をつかさどる神経を刺激することで症状の改善を図る治療です。当院では平成29年から導入しています。(図1)