湊が1995年に赴任以来、股関節疾患を多く治療してきました。当初は骨きり術が多くありましたが、人工股関節手術の進歩もあり最近は人工股関節手術がほとんどを占めるようになりました。
特徴
疾患について
股関節疾患
変形性股関節症(手術、治療、リハビリ)
股関節手術、人工股関節置換術
湊が1995年に赴任以来、股関節疾患を多く治療してきました。当初は骨きり術が多くありましたが、人工股関節手術の進歩もあり最近は人工股関節手術がほとんどを占めるようになりました。
当科の股関節治療の目標は
- 現在の生活の質を上げること
- 生活環境にあった治療を選ぶ手助けをすること
- 手術の際は最新の手術環境を整え、十分なリハビリをすること
の3点です。
MIS(低侵襲手術)
手術の傷が小さい手術と誤解される場合がありますが、本来は、皮膚だけではなく、奥の筋肉、骨なども含めて、体の負担を最小限にとどめることを目標にした手術手技です。負担が軽ければ傷の治りは早くなり、その結果退院も早くできるという利点があります。しかし、いくら負担の少ない手術でも手術がうまくいかないのでは本末転倒です。手術は一般的には、傷が大きいほうがやりやすい(ということは、うまくいく確率が高い)ですが、その中でもできるだけ傷は小さく、筋肉も切らずに手術をするのがMISです。当科では、患者さんの状態によってはMISのひとつである直接前方進入法を採用し、早期のリハビリの開始、退院を目指しています。
充実した治療体制
外科系手術には、近年コンピューター技術の発展により、ナビゲーションなどの導入が進んでいます。当科では、より正確な手術を行うために新潟医療センター、新潟大学工学部と共同開発している3次元下肢アライメント評価システム(HipCAS:LEXI社)を使い手術前の計画を行い正確な手術を目指しています。手術後は、手術の結果を正確に計測することにより今後の手術の改善に役立てようとしています。
治療計画(クリニカルパス)
脱臼の程度が軽く、骨移植が不要な最も早く退院できる人工関節手術の場合は、帰宅して安全に生活ができるよう手術後3週間のリハビリを行い退院する予定にしています。変形症の程度により入院期間は異なります。
医療費・医療福祉相談
身体障害者手帳の申請と活用、更生医療等の医療費補助などの相談を、医療福祉相談室(医療ソーシャルワーカー)にて承ります。
膝関節疾患
代表的な疾患についてご説明します。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、関節軟骨が老化により弾力性を失い、使い過ぎによりすり減り、関節が変形する病気です。肥満や素因(遺伝子)も関与しています。日本国内の変形性膝関節症患者数は2500万人以上と推定され、とても身近な疾患です。
症状が軽い場合には痛み止め、注射、リハビリテーションなどの保存治療の適応です。これらの治療で症状が治らない場合には手術が検討されます。
手術に際しては、当院では患者さんご本人の希望、病期、年齢などに応じて最適な術式を選択しており、関節鏡下半月板縫合術、関節鏡下半月板切除術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節単顆置換術、人工膝関節全置換術などを行っています。
- X線写真
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1. 関節鏡下半月板部分切除術
変形性膝関節症では、裂けた半月板がひっかかったり、はさまったりすることによる症状が強い場合があります。関節鏡下に半月板を部分切除することで、症状を緩和できます。低侵襲で術後の痛みが少なく、1週間程度の入院で行えるのが利点です。しかし、痛みの根本的な原因である膝の変形の治療ではないので、痛みが残ったり、術後おさまった痛みが1~2年で再燃してしまうことがあります。その場合は以下に述べる手術をすることもあります。
- 術中鏡視画像
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2. 高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy=HTO)
日本人の変形性膝関節症の多くは内反膝、O脚といわれる変形で、膝の内側(母趾側)の軟骨が壊れた状態です。HTOは膝の下側の脛骨を切って形を変えることで、体重のかかる場所を膝の内側から外側に移動し、痛みを緩和します。関節内部には手術が及ばないため関節機能は維持されます。骨が癒合した後にはスポーツ活動も可能であり、比較的若い方に行われることが多い手術です。術後1年程度で金属を抜去する際、関節鏡で関節内の状態をチェックしますが、元々は消失していた軟骨が再生している場合が多くあります。体重をかけない期間が1~2週間必要で、歩行までにある程度のリハビリ期間が必要になるのが短所といえます。術後3週間くらいで歩いて退院になります。
3.人工膝関節単顆置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty=UKA)
変形が膝の内側にとどまっていて比較的軽度の場合には、大腿骨、脛骨の内側だけを置換する人工関節 (UKA) の適応となることがあります。膝の靭帯はそのまま残し、骨切除量も少ない低侵襲な手術であり、術後の疼痛が軽く、曲げ伸ばし角度は良好です。術後正座が可能になる方も多くいます。術翌日より歩く練習を開始します。ただし、手術の傷が小さく、狭い視野で行われるため、正確な手術手技が要求され、また頻度は少ないですが脛骨骨折のリスクがあります。入院期間は3週間ほどです。
4. 人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty=TKA)
変形が高度な場合は人工膝関節全置換術 (TKA) の適応になります。日本国内でも、上記にあげた手術よりも圧倒的に多く行われており、良好な結果で安定している手術です。当院では、CT検査のデータから、コンピューターを使用して患者さん自身の膝の形状を3次元的に構築することで、正確で安全な手術を行っています。3週間ほどの入院が必要になります。