健康コラム

産後の女性は要注意 ―直腸脱―

直腸脱とは

直腸脱は、肛門から直腸が飛び出してくる状態です

骨盤から飛び出すものは、直腸の他にも・・・

膣口から種々の臓器が飛び出す病気があります。

骨盤臓器脱といって、ハンモックのように骨盤底の臓器を支えている骨盤底筋群が脆弱化することによって、膀胱、子宮、直腸、小腸、子宮摘出後の膣断端などが、本来の位置から下垂し、膣壁越しに膣口から脱出することがあります。

骨盤臓器脱のリスクファクター

妊娠、経膣分娩、加齢、閉経、肥満、腹圧負荷(仕事で重い荷物を持つことが多い、慢性呼吸器疾患があるなど)、慢性便秘などがあります。

直腸脱の診断

直腸脱は、直腸が肛門から飛び出している状態を見ればわかります。飛び出しているものが直腸壁かどうか、医師が診察で判断します。

直腸壁以外で肛門から飛び出るものには、痔核、直腸粘膜(直腸粘膜脱といいます)、ポリープなどがあります。

病院に行くかどうか

病院に受診するかどうかの判断ですが、直腸脱そのものは良性疾患なので、絶対に治療しないといけないものではありません。ご本人やご家族、あるいは介護者の「生活の困り具合」で受診を決めてください。

ご高齢の女性に多い病気ですので、しばしば、認知症も患っておられることが多く、本人の訴えはなく(ストレスに感じていても表出できず)、ご家族・介護者が発見して受診に至るケースも多くあります。

また、お尻の病気ですので、恥ずかしいという気持ちによって、受診をためらう方も多くおられます。診察室にはカーテンがあり、プライバシーに配慮しながら診察しますので、お気軽に受診・ご相談ください

直腸脱の治療=手術

治療を希望される場合は手術しかありません。
手術にはさまざまな方法があり、患者さんの状態に合わせて医師が提案します。
患者さんの日常生活での活動性(寝たきりなのか、スタスタ自力で歩く方なのか、など)や、全身状態(肺や心臓、腎臓などが、麻酔や手術に耐えられるかどうか)を考慮し、合併症・リスクの説明も含めて治療・手術の提案をします。

直腸脱は予防できるか

完全に防げるわけではないと思いますが、「骨盤底筋体操」により発症する確率を低くすることはできそうです(この後、リハビリテーション科より体操のやり方を簡単にご説明します)。

一度、直腸脱や骨盤内臓脱になってしまった後では、頑張って体操をしても、直すことは難しい病気です。女性で、とくに産後の方は、「骨盤底筋体操」を生活にとり入れてみてはいかがでしょうか

直腸脱予防の運動

直腸脱になると、運動等での改善は難しく、手術が適応となります。その状態に至らないために、ある程度の予防法がいくつかあります。

  1. 食生活(食物繊維などを摂り便が硬くならないようにする)
  2. 排便リズム(便秘にならないようにする。排便で長い時間力まないようにする)
  3. 骨盤底筋群の体操

骨盤の底には骨盤底筋群というものがあります。その役割として、骨盤内にある膀胱、子宮、直腸などの臓器を支え正しい位置に保ちます。
衰える原因は主に妊娠、経膣分娩の出産、加齢、運動不足、肥満が挙げられます。
今回は、骨盤底筋群を安定させるための運動を2つ紹介します。

① 下の写真の姿勢でおしりの穴をきゅっとしめたり、緩めたりします
これを10~15セット繰り返し行います
② ボールや丸めたタオルを膝の間に挟んで、5秒間つぶすように力を入れます
これを5~10セット繰り返し行います
腹筋に力が入らないように意識して行って下さい

(リハビリテーション科  理学療法士  本間大輝・後藤晴美)