健康コラム

関節リウマチの診断と治療 ―おくすりの話を中心に―

人間の身体には「免疫」というシステムがあり、体内にバイ菌などの「異物」が侵入してくると、このシステムが反応して血液中のリンパ球という細胞が「抗体」という、いわばバイ菌をやっつけるミサイルを産生して体を守ります。膠原病の患者さんでは原因がわかっていないのですが、この「免疫」システムに異常が起きて、自分の体を攻撃する「自己抗体」が産生され、これが体内の色々な臓器を攻撃して病気を起こします。膠原病の中でも患者さんが最も多いのが関節リウマチで、自分の関節を攻撃する「自己抗体」が産生され、体中の関節の腫れや痛み、変形をきたします。

関節リウマチの診断

関節リウマチで見られる自己抗体に「リウマトイド因子(RF)」と「抗CCP抗体」があります。リウマトイド因子はリウマチ以外の膠原病や全く健康な人でも陽性になることがありますが、抗CCP抗体が陽性の場合は、かなりの確率でリウマチと診断できます。しかしリウマチと診断するには自己抗体の有無だけではなく、患者さんの関節の腫れや痛みの場所や数、採血検査での炎症反応なども見た上で、総合的に判断します。

抗リウマチ薬の重要性

リウマチの薬は、21世紀の幕開けである2000年頃を境に劇的に進化しました。1つは抗リウマチ薬の進化、もう1つは生物学的製剤、JAK阻害薬の登場です。
リウマチの薬物治療は①痛み止め②ステロイド③抗リウマチ薬④生物学的製剤・JAK阻害薬の4本立てです。

痛み止め

文字通り「痛みを止める」だけで、リウマチをよくする効果はありませんので、症状が改善したら減量〜中止を目指します。

ステロイド

膠原病全般で広く用いられる薬で、強力な抗炎症作用と即効性があるためリウマチでも治療初期に少量使用することがありますが、症状が落ち着いたら減量〜中止を目指します。

抗リウマチ薬

リウマチ診療のかなめとなるのが「抗リウマチ薬」です。痛み止めのような即効性はありませんが、長期的にリウマチの異常な免疫を抑える効果を持つ、治療に欠かせない薬です。その中で最も効果が高いのが「メトトレキサート(リウマトレックス®)」で、週に1回内服することでリウマチの勢いを抑えます。大変良く効く薬ですが、間質性肺炎という特殊な肺炎や、B型肝炎ウイルスの再活性化などの厄介な副作用が知られており、開始前に副作用の危険因子がないか事前に調べることが、日本リウマチ学会のガイドラインで推奨されています。他にも「メトトレキサート」ほど強力ではありませんが全部で10種類以上の抗リウマチ薬があり、これらを単独で、時には組み合わせながら治療を行ないます。

リウマチの最新の治療薬

最新の治療薬である「生物学的製剤」と「JAK阻害薬」のお話です。

生物学的製剤

従来のリウマチ薬と異なり、関節の痛みや腫れの原因物質である「炎症性サイトカイン」の働きを直接抑制する薬です。主にTNFα(ティーエヌエフアルファ)とIL―6(インターロイキン6)のどちらかを抑える製剤が主流で、1〜2週に一度、自分で注射します。

JAK阻害薬

免疫細胞による炎症性サイトカインの産生を抑える薬で、こちらは飲み薬です。どちらも抗リウマチ薬と併用することで非常に高い効果が得られ、患者さんによっては1〜2週間以内に関節症状だけでなく、体のだるさなども劇的に改善します。さらには関節破壊や変形の抑制効果もあります。一方で、既存の薬物と比べて免疫抑制作用が強く、感染症に注意が必要です。また非常に高価なので、患者さんとよく相談しながら、必要なタイミングで副作用に十分注意しつつ使用しています。


患者さんの年齢、病気の進行度や合併症はもちろん、望むライフスタイル、例えば「今まで通りに働きたい」「家事や育児を苦痛なくこなしたい」「大好きなスポーツを続けたい」といった希望に最大限応えられるよう治療を進めるのは「リウマチ専門医」の最も重要な仕事です。皆さんも主治医とよく相談し、納得のいく治療法を選んでしっかり治療しましょう。

最後に

一番大事なお話です。リウマチの治療目標はまず「寛解導入」・・・病気が完全に落ち着いた状態を作ることです。その後「寛解維持」・・・寛解状態が続くことを目指します。つまり、ある程度長期間に渡り薬物療法を続ける必要があります。
しかし、寛解が最低でも半年以上維持されている場合には、すぐに全てというわけには行きませんが徐々に、薬物の減量や中止について相談していくことは可能です。
自分勝手に治療を中断せず、主治医とよく相談しながら適切に治療を継続するのが「寛解維持」のコツです。

本記事は新潟日報販売店グループ広報誌「にぽにぽ」58~61号の「おしえてドクター」に掲載された同医師執筆の記事内容を再構成したものです。