健康コラム

ロコモティブシンドロームについて

ロコモティブシンドロームとは

ロコモティブシンドローム(ロコモ)は日本整形外科学会から提唱された概念で、「運動器障害によって、移動機能が低下した状態」を言います。進行すると要支援・要介護となる危険性が高くなります。
現在我が国は、かつてない超高齢化社会を迎えていて、介護を必要とせず自立した生活を送ることができる「健康寿命」と平均寿命のギャップが大きな社会問題になっています。このため高齢者の日常生活の維持、「健康寿命」の延伸、医療費の抑制のために、ロコモへの対策が重要な課題になっています。

ロコモティブシンドロームの原因

運動器の障害によって「立つ」、「歩く」機能が低下することが大きな原因になります。
運動器の構成要素には、

① 身体の支えの部分である
② 可動部分であり、衝撃を吸収する部分である 関節
③ 身体を動かしたり制動したりする 筋肉・神経系

が含まれます。

頻度の高い疾患としては、骨粗鬆症、膝関節や股関節の変形性関節症、変形性腰椎症、腰部脊柱管狭窄症、関節リウマチ、サルコペニアなどがあります。これらは疼痛(痛み)、関節可動域制限、筋力低下、バランス能力低下などをきたし、人の移動機能を低下させます。高齢者の特徴は、これらの疾患が関係しあい、複合して、その人の移動機能を低下させることです。この状態が進行すると、日常生活活動の制限や要介護状態につながるため、これらの疾患と診断されたらしっかり治療することが大事になります。

ロコモティブシンドロームの評価

般の人が、自分でロコモに気づくために作られたのが、7つの質問項目からなるロコモーションチェック(ロコチェック)です。以下の項目からできています。

片脚立ちで靴下がはけない

主にバランス感覚の指標になります。靴下をはくという行為により重心を変化させつつバランスを保ち、片脚立ちをその時間続けられるかという課題になります。

② 家の中でつまづいたり、すべったりする

関節の位置覚の障害や、下肢のツッパリをチェックできます。変形性関節症では関節の位置覚が低下しており、脊柱管狭窄症などの神経障害でも位置覚が低下することがあります。また頚部の脊髄症では、足を滑らかに動かすことができなくなります。

③ 階段を上がるのに手すりが必要である

自分の体重を片足で持ち上げられるか、移動しながらバランスを保てるかの指標になります。

④ 家のやや重い仕事が困難である

掃除機の使用、ふとんの上げ下ろしなどに困難を感じるかどうかです。

⑤ 2キログラム程度の買い物をして持ち帰るのが困難である

1リットルの牛乳パック2個程度を持ち帰るのが困難かどうかです。

⑥ 15分くらい続けて歩くことができない

腰部脊柱管狭窄症に特徴的な歩行障害をチェックできます。15分での移動距離1キロメートルが目安です。

⑦ 横断歩道を青信号で渡りきれない

歩行速度の目安です。およそ秒速1メートル以上で歩けるかという設問になります。

このうち一つでも当てはまればロコモの心配があります。該当項目ゼロを目指してトレーニングを始めることがすすめられています。

ロコモティブシンドロームの予防

ロコモーショントレーニング(ロコトレ)は、ロコモ予防のための最小限かつ中心的な運動として推奨されています。
下肢筋力をつける「スクワット」と、バランス能力をつける「開眼片脚立ち」からなります。

スクワット

下肢全体の筋力を効果的に強化するための運動です。立った姿勢から、ゆっくり腰を後ろに引きながら膝を曲げていき、膝が最大90度曲がったところでゆっくり立ち上がる動作を繰り返します。1回の動作に10秒程度かけ、1セット5~15回を1日2~3セット行うことがすすめられています。

②開眼片脚立ち

バランス能力を高める運動で、左右各1分間を1日2~3回行います。片脚を5~10センチメートル上げて、他方の足で立ちます。転倒しないように、必ずつかまるものがある場所で行ってください。なかでも片脚立ちはご高齢の方でもでき、有効なものです。

食生活

せっかく運動をしても食事をきちんと摂らなければ、やせて筋肉が減ってしまいます。予防のための栄養のポイントは「毎日の食事」です。毎日3度の食事の際には、栄養素等をバランスよく摂ることが大切です。

  1. 毎食、主食、主菜、副菜を揃え、彩りのよい献立にし、牛乳・乳製品、果物を毎日適量食べること。
  2. 骨や筋肉の「素」となるたんぱく質、不足しがちなカルシウムや、ビタミンD、ビタミンKなどの摂取を心がけること。

生活習慣病の予防にもよい食事として、合言葉は「さあにぎやかにいただく」を意識しながら毎日10食品群を目標に10食品群を満遍なく食べるようにしましょう。