X線検査というと放射線による被曝を心配される方がいらっしゃいますが、検査に用いる放射線の量は極めて少なく、人体に影響を与えるものではありません。また私たち診療放射線技師が事故のないように、毎日機器の安全を確認していますので安心して検査をお受けください。
放射線科
診療科・部門
特徴
放射線科装置・検査について
X線撮影室
レントゲン写真とも言われるもので、胸部・腹部・関節・骨が主に撮影されています。画像のデジタル化により画像処理、画像保存が簡単に行えるようになりました。
私たちは、日常生活で自然放射線や人工放射線などのさまざまな放射線を受けて暮らしています。病院でのX線検査で皆さんが受ける放射線の量はこれらと比べても低いものですのでご安心ください。
検査時間
検査部位により異なりますが、おおよそ5~10分で終了します。
検査に必要な準備、および注意
- 妊娠、または妊娠している可能性がある方は必ずお申し付けください。
- 撮影部位により薄手の肌着、Tシャツ、もしくは検査衣に着替えていただく場合があります。
- 撮影部位の金属製品(ネックレス、ホックなど)やプラスチック、湿布、エレキバン、カイロ等はX線写真に写り診断の妨げになることがあります。撮影前に外してください。
- 撮影時、呼吸を止める(数秒)ことがあります。また写真がぶれないように合図があるまで体を動かさないでください。
CT撮影室
CT(Computed Tomography)とは、患者さまの体の周りからX線をあてて体内の情報を収集し、それをコンピュータで処理し輪切りの画像(断層画像)を得る検査です。
当院では、64列マルチスライスCTを設置しており、短時間で同時に複数の薄い断層画像を収集することができます。一度に複数の薄い断層画像を得ることで、三次元画像や任意の断面で画像を作成することができ病変部の発見や治療方法の検討に役立ちます。また、息止めを伴う検査も短時間で完了しますので、楽に検査を受けていただくことができます。
検査時間
検査内容により異なりますが、おおよそ10~30分で終了します。
検査に必要な準備、および注意
検査中は撮影台に寝ていただき、胸やお腹の撮影では腕が写らないように両腕を頭の上に組んでいただきます。検査中は撮影台が少しずつ移動し撮影をしていきます。
検査部位に金属製品がある場合は取り外していただきます。
造影剤について
CT検査では、より詳しい診断を行うために造影剤を使うことがあります。
次に該当する方は事前にお知らせください。
- 以前、造影剤で具合が悪くなったことがある
- 本人または血縁者に喘息やアレルギーがある
- 心臓や腎臓の病気がある
検査後は造影剤の早めの排出のため十分に水分をとってください。
マンモグラフィ撮影室(乳房撮影室)
乳房のX線検査のことで、マンモグラフィと呼ばれています。
乳房は柔らかい組織(軟部組織)でできているため、乳房専用のX線撮影装置を使って撮影を行います。標準的な撮影法は、頭尾(CC)方向、内外斜位(MLO)方向の2方向から撮影を行い、左右を比較するために両方の乳房を撮影します。女性技師が撮影を担当しています。
放射線被曝について
乳房だけの部分的なもので、放射線量もごくわずかなので被曝の心配をすることはありません。(宇宙線などの自然放射線の1/4程度)
乳房を圧迫して(挟んで)撮影を行います
乳房を圧迫すると多少痛みを伴いますが、
- 被曝線量の低減
- 呼吸、体動による写真のぶれを防ぐ
- 乳腺組織を押しひろげ乳腺組織の重なりを少なくする
など、たくさんのメリットがあるためマンモグラフィではどうしても必要になります。
X線透視室
X線で体の中を透視しながら検査を行います。そのためテレビと同じように動画としてみることができます。
主に検診・ドックなどの胃透視検査を行っています。その他、カテーテルの挿入・交換など様々な検査・治療を行っています。
当院ではFPD(フラットパネルディテクタ)搭載型透視装置を導入しました。これにより被ばく線量を少なくすることができ、高画質な画像が提供できるようになりました。
検査時間
胃バリウム検査・・・約15分
検査に必要な準備、および注意
- 妊娠中もしくは妊娠の可能性のある方は、必ずお申し付けください。
- 撮影部位により検査衣に着替えていただく場合があります。
- 撮影部位の金属製品(ネックレス、ホックなど)やプラスチック、湿布、エレキバン、カイロ等はX線写真に写り診断の妨げになることがあります。撮影前に外してください。
胃バリウム検査を受けられる方へ
- 検査前日の夕食はアルコールをひかえ、消化の良いもので済ませてください。
- 検査当日は、朝起きてから飲食やタバコはしないでください。
- 入れ歯安定剤のご使用は、可能であれば、検査前日から検査終了までご使用をお控えください。
- 薬の服用については医師にご相談ください。
MRI撮影室
MRI(磁気共鳴画像検査:Magnetic Resonance Imaging)は、X線撮影やCT検査のようにX線を使わず、電波と強力な磁石を使って体内を撮影する検査です。人体内の水分の情報を電波と磁石を使って画像化し、人体の様子を詳しく、あらゆる角度の断面画像を得ることができます。また、X線検査では画像化できなかった脊髄神経、軟骨、筋肉など軟部組織の描出に優れています。
検査時間
検査内容により異なりますが、おおよそ30~60分で終了します。
検査に必要な準備、および注意
検査用ベッドに寝ていただき、体の位置がずれないように固定します。検査中、「トントン、ビービー」という大きな音が聞こえてきますが、装置から出る音ですから、安心してください。
検査を受ける際は金属製品をすべて取り外してください
カラーコンタクトは、材質的に金属が使われている場合がありますので、検査の前にはずしていただきます。 化粧品には、磁性体が含まれているもの(マスカラ・アイライン・アイシャドウ等)があり、検査画像に影響があるだけでなく目の粘膜等を傷つけたりすることがあるので、お化粧を落としていただくことがあります。
以下に該当される方はご相談下さい
下記に該当される方の中には、磁石または電波の作用により安全に検査を行えない場合があります。主治医、またはスタッフにご相談ください。
- 体内に心臓ペースメーカーが入っている方
- 脳動脈クリップが入っている方(材質により検査可能な場合もあります)
- その他、体内に金属が入っている方(場所、材質、種類により検査できない場合があります)
- 妊婦、妊娠の可能性がある方(胎児に対して安全性が確立されていません)
- 入れ墨がある方(火傷・変色する場合があります)
- 狭い所が苦手な方
MRI造影剤の使用について
MRI造影剤を使用する方で、次に該当する方は必ず事前にお知らせください。
- 以前、造影剤で具合が悪くなったことがある
- 本人または血縁者に喘息やアレルギーがある
- 心臓や腎臓の病気がある
骨密度測定(骨塩定量検査)
骨粗鬆症や加齢による骨の変化の診断に利用されています。この装置は腰椎もしくは股関節で精度の高いDEXA法(Dual Energy X-ray Absorptiometry)にて検査を行っております。DEXA法とは2種類のエネルギーの放射線を検査部位に当てて、骨と軟部組織の吸収率の差で骨密度の計測をする方法です。
検査時間
検査時間は検査部位により異なりますが、おおよそ5~10分で終了します。
検査に必要な準備、および注意
- 妊娠、または妊娠している可能性がある方は、必ずお申し付けください。
- 撮影部位の金属製品、湿布、エレキバン、カイロ等は取り外してください。また検査衣に着替えていただく場合があります。
- 測定している間は、合図があるまで体を動かさないでください。
放射線被ばくについて
放射線に関しての正しい理解と、少しでも放射線に対する不安を取り除けるように、放射線被ばくについてお伝えしたいと思います。
まず、よく耳にするようになった放射線の単位(ベクレル(Bq)、グレイ(Gy)、シーベルト(Sv))ですが、放射線を出す能力がベクレル、放射線のエネルギーが物質(人体)に吸収された量を表す単位がグレイ、受けた放射線の度合いを表す単位がシーベルトです。シーベルトは、放射線の人体への照射による将来への影響を評価するための単位で、放射線管理のために用いられます。
実際に放射線に被ばくしたときの影響は、確定的影響と確率的影響に分けることができます。
確定的影響とは、短時間に高い線量の被ばくをした場合、ある一定の線量(しきい値)を超えると障害が現れることを言います。主な影響としては、脱毛、白内障、皮膚の障害、造血能力の低下、不妊などがあります。
通常医療機関などで行われている放射線検査において、確定的影響が現れるものはほとんどありません。
確率的影響とは、放射線被ばく線量の増加に比例して障害の発生率が増加することを言います。がんや白血病、遺伝的影響があります。低線量での被ばくのリスクは非常に少なく、日常生活で発がんに起因するリスクを低く抑えたほうが健康に良いと考えます。
また、私たちの身の回りには、宇宙、大地、空気中、食物中などに、自然放射線と呼ばれる放射線が存在します。
自然放射線からの被ばくは、年間約2.1ミリシーベルトです。内訳は、宇宙線から0.3ミリシーベルト、大地から0.33ミリシーベルト、空気中のラドンなどの吸収により0.48ミリシーベルト、食物の摂取から0.98ミリシーベルトと報告されています。
私たちの普段の生活の中で浴びる放射線のうち特に多いのは、宇宙や大地といった自然からの放射線を除けば医療による放射線です。
医療放射線による被ばく量は、たとえば胸部エックス線撮影では 0.06ミリシーベルト、エックス線CT撮影では5~30ミリシーベルトと検査の種類によりかなり異なるのですが、がんリスクという観点からみると、いずれも少量であり、それに伴うがんのリスクの増加は科学的には証明されていません。
また、放射線を受けた体の中にその放射線や放射能が残るということもありえません(核医学検査で放射能を持つ薬を使った場合は、しばらく体内に薬が残りますが、数時間から数日で無くなります)。
むしろ、それよりも検診や検査によってがんなどの病気が発見されて、適切に治療されることによるメリットの方が圧倒的に大きいといえます。
現代の医療はもはや放射線なしでは成り立ちませんが、診断や治療で用いられる放射線は、それによるリスクよりメリットの方が上回る場合にのみ用いることを原則としています。
病院を受診する皆様におかれましては、被ばくすることを過度に怖がることなく、安心して診療を受けていただきたいと思います。