関節再建センター

診療科・部門

特徴

現在、当院整形外科「関節再建センター」では股関節、膝関節の⼈⼯関節置換⼿術を、年間300症例以上の手術を行っています。

2018年7月より、CT-basedナビゲーションによる手術を行ってきましたが、2024年7月に先端テクノロジーのロボティックアーム支援手術“Makoシステム”を導入しました。このシステムは、術中に医師が操作し、傷んだ骨を削るために使われます。術前計画のとおりに治療を行うことが今まで以上に期待できるようになり、術後の痛みを減らすとともに動作制限の緩和にも期待できます。

患者さまのQOL(生活の質)向上のため、手術の正確性と安全性を高めていきます。

Mako

「Mako(メイコー)」は、日本で初めて承認された整形外科におけるロボティックアーム手術支援システムです。

このロボットは医師の手術を支援するものであり、0.5㎜、0.5°単位で調整可能。

安全正確にインプラントの設置することができます。

この治療は、膝と股関節の両方の手術に保険診療で受けることができます。詳しくは当院整形外科医師にお尋ねください。

股関節の疾患と治療・手術

変形性股関節症

最終的に軟骨がすり減り、変形した状態のことで、様々な原因により、股関節(足の付け根)に痛みや動かしにくさを感じる病気です。はじめは、立ち上がる、歩き始めに痛みや違和感を覚えます。そして、よくなったり悪くなったりしながら、徐々に悪くなっていきます。

発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)、寛骨臼形成不全、大腿骨頭壊死が主な原因です。股関節は体重を支える大事な関節でありますが、その体重を支える部分が少なく成長したため、またそれが原因で大腿骨の変形も存在することもあり、最終的には軟骨がすり減ってしまいます。

初期
進行期
末期

寛骨臼形成不全

日本人は股関節痛の原因は60~80%が股関節の受け皿の足りない寛骨臼形成不全(以前の名称:臼蓋形成不全)とされており、骨成長の終了する10代後半には、寛骨臼形成不全であるか否かは決定しております。そのため、早い方では10代より股関節痛を自覚します。

一般的には40代より痛みを感じ始める人が多いですが、すでに軟骨がすり減り始めた状態であることも多いです。それは、痛みの程度がそれほど強くないからです。ちょっと違和感が昔からあった、痛かったけど痛み止めでよくなった、など軽度な痛みであることが原因と考えられます。

治療

いずれ軟骨がすり減り変形性股関節症へと進行します。軟骨がすり減り始める原因の一つに筋力の低下があげられます。股関節は20数個の筋肉で動かすとされています。その一つ一つが2足歩行への進化の過程で必要と考えられたため、生き残った大事な筋肉であります。そのため、筋力の低下は関節をゆるくし不安定性を生んでしまいます。そこで、プールでの運動やエアロバイク(自転車こぎ)、ストレッチ(関節の動かせる範囲を保つ)が重要となります。また股関節に近い膝関節や腰も同様に股関節に深く関わっていますので、その状態も重要です。そこで、リハビリテーションに通院していただき、評価をしてもらいながら目標をもって行いましょう!

痛みが強いときは、無理しないことも重要ですが、どういう動作で痛みが出るのか、どうすると痛みがでないのか、を確認してください。痛みの出る動作は避けた方がよいでしょう。夜間寝られない、じっとしていても痛みがあるときは痛み止めを飲んでみることもいいです。ただ、常に痛み止めが必要になったときは、手術も考えた方がよいでしょう。

手術

Makoシステム

人工関節置換術は、X線検査やCT検査の結果をもとに術前計画を立て、人の手で手術を行ってきました。近年、医療の現場に登場してきたのが“ナビゲーションシステム”です。

これによって、術中にリアルタイムで角度や深度などに関する支援を受けながら手術することができるようになりました。

その後、術中リアルタイムのナビゲーションに加えて、ロボティックアーム手術支援システム“Mako”が登場しました。術前の計画通りに、医師がロボティックアームを手に握って操作します。

  • アームが適切な位置に動くことで手作業特有の微小な動き、計画外の動きを制御、血管・神経・靭帯など軟部組織への不意な損傷、骨の削りすぎ、削る角度の誤差を低減します。(ヒューマンエラーを極力回避)
  • 人工関節の設置精度の向上や、術後の合併症の1つである脱臼を減らすとともに動作制限の緩和に期待できます。
  • 2019年に日本国内でロボティックアーム支援手術が保険適応となりました。膝と股関節の両方の手術に、保険診療で受けれます。
手術の正確性

患者さんに合ったポジションに⼈⼯関節(インプラント)を設置でき、術後の合併症を減らすとともに、術後の動作制限の緩和にもつながることが期待できます。

体への負担の軽減に期待

視野を確保するために押さえたり広げたりする必要がなく、関節周りの筋肉や筋を温存できることから、手術によって体にかかる負担や筋力の低下などを可能な限り抑えた治療が可能です。

安全性の向上

予定計画域を超えるとアームが自動的に止まる機能があります。そのため、関節の周囲にある大事な神経や血管を傷付けるリスクが抑えられ、安全性の向上につながっています。

長期耐用性の向上

適切なポジションに設置すれば余分な⼒が加わりにくく、摩耗を減らすことができます。患者さん⼀⼈ひとりに合ったポジションに⼈⼯関節(インプラント)を設置できれば、摩耗抵抗性の向上により部品を⻑持ちさせることが期待できます。

ロボティックアームを使用した人工股関節置換術とは

術前計画
手術前に治療計画をたてます。CT検査を行い、患者さんの骨格の情報をコンピューターに入力し、人工関節のサイズや設置する位置、骨を削る深さや角度などを決定します。
術中調整
手術中は、脚の長さや、関節が安定する適切な人工関節の位置をリアルタイムにコンピューター画面で確認し、調整します。
ロボティックアーム支援
医師はロボティックアームを持ち、その先端に取り付けられた器具をナビゲーションに従って操作し、骨を削り、人工関節を設置します。このとき、治療計画から外れた角度や深さで骨を削ろうとしたり、人工関節を設置する位置がずれたりすると自動的にロックがかかり動きを制御します。これにより、治療計画通りの安全かつ正確なインプラントの設置を支援します。
手術の流れ
  1. 1.骨頭を切除し、大腿骨の内側を整えます。
  2. 2.ロボティックアームを用いて骨盤(臼蓋)の表面を整えます。
  3. 3.ロボティックアームを用いてインプラントを設置します。
  4. 4.大腿骨にインプラントを設置します。
  5. 5.各インプラント部品を設置します。
  6. 6.人工股関節の設置が完了しました。

ロボティックアーム手術支援システム“Mako”で治療可能な対象疾患

変形性股関節症
変形性膝関節症

人工股関節全置換術(THA)

30年入れ替えの必要のない時代へ

以前は、治療の最後の手段として行われていた人工股関節ですが、現在ではその考え方も変わってきています。人工関節の製品が改良され、ライナーといわれる軟骨の代わりになるものが、削れにくくなったこと、そのため大きな骨頭が使えるようになったため、人工関節の寿命が30年の時代に突入したと言われています。そのため、現在では日常生活を有意義にするために手術される方も増えてきております。

カップ ライナー ヘッド
ステム

人工股関節

骨盤側にカップ、大腿骨側にステムを挿入します。新しい関節面はライナー(軟骨の代わり)とヘッド(大腿骨の骨頭の代わり)の部分です。新しい関節面には神経はありませんので、痛みを感じません。また、2000年以降の新しい構造のライナーが削れにくくなったため、30年近く入れ替える必要がなくなるのではないか、と推測されています。

寛骨臼回転骨切り

寛骨臼形成不全に対する治療法として寛骨臼回転骨切りがあげられます。関節軟骨が十分に残っている方に行う手術方法です。

手術前
手術後

寛骨臼の周りをくりぬいて、回転させて、不足していた外側の被覆を大きくし、正常の形に近づけます。回転させた骨片はスクリューで固定します。リハビリでは、術後2週間は体重をかけることはせずにリハビリし、その後徐々に体重をかけ、約2か月後、松葉杖を外せるようになります(状態によります)。自分の骨で手術できるため、骨癒合(骨がくっつけば)が得られれば、基本的にしてはいけないことはありません(人工関節との違い)。ただ、状況によっては、将来人工股関節になる可能性もありますが、自分の骨で生活できる時間が長くなります。

人工関節置換術(股)施行件数

2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
4月 17 14 11 25
5月 10 11 16 23
6月 18 18 20 28
7月 17 17 19 23
8月 13 16 25 24
9月 10 20 24 25
10月 16 19 19 18
11月 16 15 11 20
12月 11 23 21 23
1月 17 13 24 26
2月 14 18 25 23
3月 14 27 21 18
合計 173 211 236 276

(両側THA29件

※両側件数は1カウントで算出されています

寛骨臼移動術施行件数

2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
4月 1 2 1 2
5月 4 0 1 2
6月 1 2 2 2
7月 1 5 4 2
8月 3 0 3 3
9月 3 0 2 4
10月 2 1 1 1
11月 3 2 1 1
12月 3 2 1 2
1月 3 2 1 0
2月 4 2 3 1
3月 1 0 3 1
合計 29 18 23 21

関節再建センター設立にあたり

股関節は早ければ小学校入学前から痛みが出現することもあり、その年齢に応じた治療が必要になります。専門的なリハビリなどの治療により、今後の生活の仕方を覚えてもらい、痛みを和らげることを考えます。ただ、それでも痛みがなくならない、日常生活が不便である場合、手術による治療が必要となります。関節軟骨がまだ保たれている状況では、骨切り術(例:寛骨臼回転骨切り術など)、軟骨がすり減った状況では人工股関節全置換術(THA)が主に行われます。このように、長い期間付き合っていかなくてはならない関節を再建する、ということが我々の役目であると考え、関節再建センターと命名いたしました。

Makoシステム導入に至った経緯・きっかけ

関節再建センター開設当初から、CT-basedナビゲーションによる手術を行ってきました。手術はナビゲーションのない時代には、人工股関節の設置は手術する医師の技量に成績は左右されておりましたが、ナビゲーションの使用により、人工関節の設置精度が格段に向上しました。そこに、2019年日本国内でロボティックアーム支援手術が保険適応となり、十分な症例が日本国内でも行われ、合併症を起こさず、さらによい成績が報告されました。以前から注目していた先端技術で、導入は私たちの悲願でした。患者さまにとって多くのメリットが得られると確信し、導入するに至りました。

再建センターで大切にしていること

センターでは、関節疾患に特化した医療(専門医師・看護師・リハビリテーション)により早期社会復帰を目指した医療を提供しております。筋肉を限りなく切らない負担の少ない手術を心掛け、手術支援ロボットを用いて人工関節を正確に設置することで、合併症を減らし患者様に良質な治療が提供できるよう、Makoシステムとともに、これからも最善を尽くしてまいります。

また、患者様の社会的背景(仕事をしているため、会社を長くは休めない)や近年の家庭環境の変化(おじいちゃんやおばあちゃんと同居していない、もしくは近くに住んでいないため、長く家を留守にできない・一人暮らしなのでしっかりリハビリしてから帰りたいなど)にも対応できるよう、患者様の事情に合わせた治療に努めております。

手術後も1日6000歩から1万歩を歩けるような関節にできるよう、お手伝いいたします。

新潟万代病院は、受診してくださった皆様の気持ちに寄り添い、手術だけに限らない適切な治療方法を共に考えていきますので、どうぞ気軽にお越しください(紹介状なしでも結構です)。

「股関節患者会(Olive)」からのお知らせ

新潟万代病院では、股関節痛を抱える方、股関節の手術をされた患者さまへの情報提供の場が必要であるとし、2021年5月1日に患者会“オリーブ(Olive)“を立ち上げ、現在活動しております。昨今、インターネット・スマートフォンの普及で、簡単に情報が手に入る世の中になりました。その一方で情報がたくさんあるため、何が正しい情報であるか、を判断することは難しくなっております。このような情報社会の中で、私たちが考える最新の情報をお届けできる機会、そして患者さま同志がつながる機会が必要であると思っております。当院で手術した患者さまに限らず、股関節にお困りの方であれば、どなたでも入会(無料)できますので、ご興味のある方はぜひご連絡ください。

お問い合わせ・申し込み

〒950-8584 新潟市中央区八千代2丁目2番8号

新潟万代病院 地域連携室

TEL:025-244-4701

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